近年、SNS上ではインフルエンサーの華やかな暮らしや芸能人さながらの容姿が大きな注目を集めている。その影響を受け、まだ物事の判断力が十分に育っていない中高生が、美容整形や脱毛といった施術を安易に検討するケースが増加している点は看過できない。背景には、メイク動画や整形のビフォーアフター写真が拡散され、「努力次第で誰でも大きく変われる」という期待を抱かせるマーケティング手法がある。しかし、実際には費用面のハードルが高く、経済的にも精神的にも余裕のない家庭ほど、子どもが「親ガチャに外れた」と感じる事態を招きやすい。
新たな貧困化を生む容姿格差
とりわけ、文化資本の低い家庭や親子関係がぎくしゃくしている家庭では、子どもの美容や外見に投資することが難しい。その一方で、SNSでは外見重視の価値観がますます可視化され、容姿に優れたユーザーの投稿が拡散されやすい構造ができあがっている。このような環境下で育つ子どもは、自分と他者の容姿を比較し続けることで強い劣等感を抱き、「整形をしたいが、費用を稼ぐために水商売をするのは嫌だ」というような葛藤に直面する。実際、そのような投稿が炎上し、メディアに取り上げられて社会問題化する可能性は高まっている。
外見至上主義がもたらす歪み
さらに懸念されるのは、自己肯定感の低い若年層が、安易に外見至上主義へと傾いてしまうことである。本来であれば、成長期の子どもには年齢相応の価値観や豊かな自己認識を育む機会が必要だ。しかし、SNSを通じて配信される広告やインフルエンサーの投稿は、「外見さえ整えば人生は好転する」という過度な期待を煽ることがある。結果として、思春期の子どもが焦燥感に駆られ、家庭環境への不満や経済力の不足を親の責任とみなす悪循環が生じてしまう。
大人と社会が求められる役割
このような事態を防ぐには、まず大人がSNSの影響力や美容意識の高まりに適切に向き合い、子どもに偏った情報だけが与えられないよう、教育とサポートを行うことが不可欠である。さらに、事業者側のマーケティング手法にも、青少年への過度なアピールを抑制する配慮が求められるだろう。SNSと美容、そして家庭環境が複雑に絡み合う現代において、容姿格差を新たな貧困のかたちとして放置することは、社会全体に深刻な影響を及ぼしかねない。子どもたちが安易に自己否定に陥らず、健全な将来像を描けるよう、家庭・教育機関・社会が連携して取り組む必要があると考えられる。
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